岡山県産万成石でつくる古代型五輪塔

こんにちは。小田原市でお墓の仕事をしております石政石材、露木です。

カレンダーも最後の一枚となり、今日から12月(師走)に入りました。

朝晩の冷え込みも厳しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

先日、知人とそのお母様よりご依頼いただき、8月に亡くなられたご主人様のためのお墓づくりをお手伝いさせていただきました。

ご主人様への敬意とご家族の温かい想いが詰まった素晴らしいお墓が完成しましたのでご紹介いたします。

今回使用した石種は弊社でも時折使用します岡山県産の万成石。

国産の桜御影石とも呼ばれるこの石は、ほんのりと淡い桜色が特徴で、非常に硬く吸水率が低いことから、古くから多くの著名人のお墓や建築物にも使われてきた銘石です。

お墓のかたちは、供養塔として最も格式高いとされる「五輪塔」を選びました。

今回はその中でも、鎌倉時代の端正な美しさを今に伝える、奈良県・圓成寺(えんじょうじ)の五輪塔(重要文化財)をモチーフに設計しております。

石の表情を決める仕上げには、「小叩き(こたたき)仕上げ」を施しました。

石の表面を熟練の職人の手で細かく叩くことで生まれる柔らかな風合いは、年月を経るごとに味わいを増し、まるで古刹に佇むような奥ゆかしさを感じさせてくれます。

また、足元には蓮の花が反り返ったような優美な「大和型の複弁反花座(かえりばなざ)」を据え、正面の梵字は断面がV字になるよう鋭く深く刻み込む「薬研(やげん)彫り」で仕上げました。

万成石の桜色に、薬研彫りによる深い影が落ちることで力強い陰影が生まれ、祈りの空間にふさわしい、荘厳な佇まいとなりました。

五輪塔の制作が完了し、現場工事へと移ります。

カロート部分の基礎工事になります。

いつものように床堀りし、敷き均した砕石を転圧。

その後鉄筋を配筋し、コンクリートを打設。

外からは見えない部分になりますが、カロート部分も国産石にこだわり関東を代表する堅牢な石材、茨城県産の真壁石を使用しました。

石と石の接合部分には特性の異なる2種類の耐震ボンドを充填。

五輪塔の据え付け工事になります。

現場用のカニクレーンを使用し慎重に石を積み上げました。こちらも見えない部分になりますが中心にはステンレス製の心棒を通し、さらに耐震ボンドを併用することで地震に強い堅牢な構造に仕上げております。

また、墓所内にあった既存の小仏についても文字がはっきりと読み取れるレベルまで丁寧にクリーニングを行いました。

ご先祖様が守ってきたものを大切にしつつ、新しいお墓と調和するように整えさせていただきました。

お名前などを刻む墓誌につきましては、同じ万成石でもあえて「本磨き仕上げ」を採用いたしました。

鏡面のように磨き上げることで石の艶を引き出し、彫刻された文字がくっきりと鮮明に見えるように配慮しております。 本体の「小叩き」の渋い質感と、墓誌の「本磨き」の艶やかな質感。

役割に合わせて仕上げを変えることで、機能性とデザインの調和を図りました。

完成後、納骨式にも立ち会わせていただき

お母様より「おかげさまで本当に理想のお墓ができた」と、心からの感謝のお言葉をいただきました。

知人のお父様でもあるご主人様への供養のお手伝いができたこと、そして何よりご家族に喜んでいただけたことに、石屋としてこの上ない喜びを感じております。

この淡い桜色の五輪塔が、「万年成就」の願いを込めた万成石のように、永くご家族を見守てくれることを願っております。

この度は大切なお墓の建立をお任せいただき、本当にありがとうございました。

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